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明治期における演劇改良とリアリズムについて

鴻英良先生の下で秋庭太郎『日本新劇史』について発表してまいりました、
上下巻で1000p以上ある大著ですが、その内五章まで、150pくらいを。

第一章 明治初期に於ける脚本事情と演劇
第二章 新史劇の発展
第三章 局外指導者の先験依田学界
第四章 明治初期に於ける西欧戯曲の流入
第五章 演劇改良運動

かなり、要約、すると
明治元年~10年くらいは、学者、知識人の間で医学や経済学、技術面等で欧化を進めろという言説が形成されるが、西南戦争(明治10年)以降演劇他文化的な面においても積極的な欧化が始まる。
それまで演劇、と言えば歌舞伎の事であり、卑俗なものとして水野忠邦の「天保の改革」以降都心では上演する事ができなかったが、政府の方針転換もあり新富座に本拠地を移した守田座を中心に、九世市川団十郎は活歴劇(写実傾向の芝居)を次々と行っていく事となる。見得を切らない、細々と喋る、等歌舞伎では考えられない手法を取った活歴劇はやはり当時の民衆にはあまり受け入れられず、守田座は財政的に圧迫されたが、座主の守田勘弥はかなりの西欧主義を取った人で、その思考様式と団十郎の写実傾向が一致した為、上演を続けていたと考えられる。また、当時は役者主、脚本家従、というヒエラルキーがあったのだが、そうした中で団十郎の要望に応え活歴物の脚本を書いていた黙阿弥の貢献は大きいだろう。
さて政府方は伊藤博文内閣の発足(明治18年)と共に、「演劇改良会」設置を目論み、翌年発足。恐らく目的は当時制定されていた安政五ヵ国条約改正の為、西欧の文化を知る必要があったという事であろう。会員には渋沢栄一や森有礼等大御所がいたが、どうしても官僚主義的になってしまい、具体的な提言も、現場の事の分からない、実のないものであった様である。それでも依田学界等の尽力により、一応形の整った戯曲を構成する事もでき、その芸術的価値は置いておいても、歴史的には意義のあるものであったと言う事ができよう。また、初の天覧劇も行われる運びとなり、演劇が社会的に認められる様になったという意味において、演劇改良会(というより知識人による演劇のバックアップ)は明治初期の演劇改革においては非常に重要であった。

といったところかしら。
上の要約ではあまり強調しなかったけど、著者秋庭太郎は、黙阿弥、依田学会等の書いた新傾向の戯曲が、演劇改良にとっていかに大きな要素であったかという事を主張する。西堂行人も(ハイナ―ミュラープロジェクトに参加していたからか)演劇改革はまず戯曲から、という様な事を述べていた様に。そりゃそうだ、歌舞伎の脚本を写実的に読んだら…滑稽にしかならないだろうという事は予測されますし。
しかし、しかしね。当時の「写実」とはどういう事であったかと考えると、これはかなり怪しい。
当時の役人の言で、「演劇は、史実に基づき、勧善懲悪のものをやらなければならない」というのがあったのだけど、
史実に基づいたら勧善懲悪じゃないじゃない。ソビエトの「社会主義リアリズム」が社会主義でもリアリズムでもない様に(笑)、当時の「写実」は…歌舞伎(という卑俗なイメージ)からの脱却、という文脈が非常に強い様に思われます。
九世市川団十郎の絵とか見るとまだかなり歌舞伎色が強いもんで、今の僕らからしたら、写実どころかこれ完全に歌舞伎じゃんと思ってしまうところだけどね、とりあえず見た目は。

後に依田学界の脚本は、坪内逍遥大先生によって「内面描写を軽んじている点で良くない」とバッシングされております故、所謂「西洋写実主義」は僕が調べたところより後の時代になってから、より緻密に再検討されるのかしらね、
いやぁ楽しいす。うーん歴史楽しいすねー…日本史にはかなり疎いもんで…なかなか厳しいけど…
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テーマ : 演劇
ジャンル : 学問・文化・芸術

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Author:kenken
ベルクソン、フランス現象学辺りから時間/イメージ論にアプローチしております。
哲学をする、事は演劇をする事であり、演劇研究は哲学でしかあり得ないという考えの下に、両者の関係をより精緻に見ていきたいという所存で御座います。
いずれ演出、俳優業も再開したいなぁ、などと!


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